曲水の宴

永和九(353)年、中国・会稽山(浙江省紹興)の蘭亭というところで、書聖・王羲之の呼びかけにより、41名の名士が集まって、「曲水の宴」という詩会が行われた。「曲水の宴」は、杯を流す曲水を造り、酒が流れてくるまでに詩を詠み、酒を飲むという雅宴のことで、悠久の自然と大気、自分の生き方を重ね合わせて愉しむというものであった。

そこで作られた詩集の序文が「蘭亭序」。

王羲之によって書かれたその序文も、趣がある。今から1661年も前(日本では古墳時代)に生きていた人が、既にそれより前の時代への感慨を抱いて、後世の人(つまり我々)も、きっとこの文を読んで心を動かすことだろうと綴っている。

日本においても、「曲水の宴」が奈良時代~平安時代中期までは宮中の年中行事として正式に行われていた。また再興という形ではあるけれど、京都・城南宮では今でも毎年、4月29日と11月3日に催されている。そこでは雅な平安王朝の時代を思わせる装束を身にまとった歌人が和歌を詠む。

今の時代において、ゆるやかな時の流れに身を任せながら、遙か遠い過去を想像し、人生の感慨に浸ることは、王羲之が生きた時代より、いっそう贅沢な愉しみなのかもしれない。

曲水の宴

清らかなるもの

権勢の残像

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