気韻生動

現在、国立新美術館とサンシャインシティ文化会館で開催されている『第32回読売書法展』。書展に展示される書作品は、気軽に創作という言葉を使うことがはばかれるような、どちらかと言えば、常日頃の稽古、修行に近い鍛錬の成果が書に表れている。書法会の懇親会の席で、大変高名な先生が、手本1つにつき500枚は書いて稽古に臨んでいたという話を聞いた。腕を磨くには、模倣するということにおいても、不断の努力が不可欠だ。ただ、それだけで良いのかと言えば、ことはそう容易くはない。

私が書を志すきっかけを与えてくださった青山杉雨先生の言葉にはこうある。

「今後、書を深めようとする人たちは、ある時には伝統の書法を重んじ、また、ある時にはその伝統を捨て去って文字と筆と墨と紙だけの関係に立ち返って考えてみる。これを反復して行い、どちらに傾き過ぎてもいけないのです」(1986年 会報より)

本当の創作というものは基礎の上に成り立ち、その上で際限の無い時間と労力を自らに課すこと。安易にフィーリングやセンスに委ねず、まず自分に厳しくなければ「気韻生動」な書は生まれない。

気韻生動

まんまこと

誇り

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