2010年3月 タイ王国

CONCEPTⅠ>>

村上春樹さんの『ノルウェイの森』を題材に

日本の文字の形の美しさを知ってもらう

◇日本の美しい文字プロジェクト vol.3 タイ_1

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流麗な文字の形

『バンコク国際ブックフェア』における席上揮毫は、せっかく「公開」ということなので、ならばとことんご覧頂こうと、美術鑑賞などでよく使われている単眼鏡”で、私が文字を書いている様子、そして文字が生まれ落ちていく瞬間を観察してもらうというものにしました。筆により作り出される文字の“ディティール”を見てもらいたかったのですが、なによりも上から下へ流れるような曲線を描く、日本の文字の形状の美しさを直に感じてもらいたいという意図がありました。

このデモンストレーションは、最終的に全長16m、約5時間に及ぶものとなりました。

 

CONCEPTⅡ>>

古代の「大和言葉」を題材に

日本の「神道」の源流にある古代思想を知ってもらう

◇日本の美しい文字プロジェクト vol.3 タイ_8

◇日本の美しい文字プロジェクト vol.3 タイ_4

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エコロジーに繫がる日本の古代思想

古代の日本人は、“八百万の神”然り、付喪神(つくもかみ)”然り、森羅万象の全てに神が霊魂として宿っているという思想を持っていました。自然と人間、自分と他者、物と霊など、全ては結ばれていて一体感をもって生きていたとされています。しかし、現代の日本においては、一体感ではなく他者との差別化、排他的に必要な物と不要な物を分けてしまう(「ゴミ」とする)ことに躊躇がありません。最近でも「ファスト」という言葉に象徴されるように、徹底した合理化の追求は、〈生産→消費→破棄〉のシステムの上に成り立っています。一方、タイでは例えば物が作られる過程で少し欠けてしまったとしても、それが普通に市場に並べられ、自分に不要となった物は人に譲ったり売ったりするという慣習が昔からありました。

日本から廃材を持ち込む

古代の日本には、〈万物が結び付いていて、共存している〉という思想がありましたが、現代に生きる私たちはそのことを忘れています。そんな状況もあり、日本から廃材(物)を持ち込んで、タイのワークショップで再生させたいということを考えました。そして物(古代では霊としても捉えられていた)に、人が文字を書くことによって、人と物との一体感(結び)を感じてもらうことが出来るかという試みを行いました。 参加者に書いてもらったのは、日本に漢字が伝来する以前から存在し、物事を「伝達する手段」というより、「感慨」を共有するためにあった大和言葉(倭語)”です。

すこやか、しなやか、うるわしい、しとやか、おくゆかしい…大和言葉には濁音が少なく、その響きには優しさや柔らかさが感じられますが、古の日本人の感性を少なからず共有してもらえる場となったのではないかと思っています。

◇日本の美しい文字プロジェクト vol.3 タイ_6

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