2013年5月 イタリア

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和様漢字で書かれた「花鳥風月」という語句を題材に

平安時代の国風文化を知ってもらう

◇日本の美しい文字プロジェクト vol.9 イタリア_24

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花の祭典、インフィオラータ

世界遺産の街、イタリア・シチリア島のノート市では、“インフィオラータ”という花の祭典が、毎年開催されています。インフィオラータとは、キリスト教の行事の一つで、その歴史はおよそ300年前、司祭が街の人々の幸せを願い、一年に一度、街を練り歩く際に花を撒いたことが始まりであるとされています。それがだんだんと賑やかなものとなり、現在のように路上に「花絵」が飾られる慣習となったそうです。 日頃から世界各地より観光客が多数訪れているノート市ですが、特にこのインフィオラータが開催されている期間は、街に暮らす人たちと観光客とが一緒になって、花であしらった作品を作り上げ、文字通り、街は華やいだ雰囲気で包まれます。

国風文化をプレゼンテーション

そのインフィオラータの2013年のテーマが「日本」ということで、ノート市からご招待頂き、この歴史ある催しに参加させて頂くことになりました。従来は“絵画”をモチーフにして作られますが、特別に私の“書”をモチーフにしたいというご意向を伺い、私から次の二つの提案をさせて頂きました。

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和様と料紙

一つめは漢字を“和様”と呼ばれる日本スタイルの字形で揮毫したものにすること、二つめは文字の背景を、“継ぎ紙”という技法を用いて作られる料紙(書画を書く紙)をイメージしたものにするということです。そこには日本独自の感性や美意識が構築されており、こうした平安時代の国風文化を私なりに海外でプレゼンテーションしたいという意向がありました。文言の 題材には“花鳥風月”という言葉を選びました。

私が揮毫した文字と継ぎ紙による料紙をイメージした図案とが重ねられて一枚の絵となり、それを花で立体的に形作っていくのですが、一文字あたりの大きさは約5m×7m、制作には延べ50人程の人たちが携わってくださっています。 墨の部分は、黒い花というものがありませんので、黒い砂で作られていますが、そこにもこだわりがあり、私の書いた文字の“掠れ”の部分は白い花びらを使い忠実に再現されています。そして「花」「鳥」「風」「月」の4文字からなるインフィオラータ作品は、背景の継ぎ紙の絵柄が繫がっていますので、「一枚の紙に揮毫した書作品」として見えるようにもなっています。

◇イタリア滞在記~作成中~/書家 木下真理子 linfiorata「花鳥風月」_7

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雅やかな美意識の結晶

“和様”というのは、平安時代中期に確立した漢字の表現形態です。もともと漢字は中国から伝来したものですので、はじめは中国にならって“唐様”で書かれていましたが、平安貴族たちによる日本独自の文化を見出そうという気運が起こり、豊潤温柔な字形の“和様”というスタイルが生まれました。それは同時代に生まれた“平仮名”との相性も良く、日本の書は、まるで〈風の流れで交じり合った墨流し〉とも例えられるように、流麗で優美なものとなりました。

この和様は、明治維新前の江戸時代末期まで、日本の文字のスタイルの主流として踏襲されていきます。

“切り継ぎ”“破り継ぎ”“重ね継ぎ”などの工芸技法による「継ぎ紙」には、“あわせ”・“ぼかし”・“かさね”といった日本人の美意識が伺えます。また金・銀の砂子や切箔も散りばめられたり、金泥や銀泥による文様も施されるなど、まさに「宮ぶ」が語源の「雅」な宮廷貴族の美意識が反映された美の極致と言えるものです。そんな“料紙”はそれ自体が日本文化の結晶であるということも、改めて世界の人たちに知ってもらいたいと考えました。

◇日本の美しい文字プロジェクト イタリア

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