はじめに
日常生活において、手書きにより文字を書くという機会は、一昔前と比べるとずいぶん減ったのではないでしょうか。最近は電子メディアとそれにともなうツールの普及によって、文字は書くものというより、打ち込むものという風潮さえあります。
遡ると、大正時代も書く道具が様変わりした時代でした。それは「毛筆」から「硬筆」への移行です。それまで筆を使って文字を書くということが何百年と続いていたわけですから、鉛筆や万年筆などを使って文字を書くことは、その時代の人にとって、とても新鮮であると同時に、楽しいことであったはずです。
文字をきちんときれいに書くことも大切ですが、この練習ノートは、堅苦しいノウハウより手書きで硬筆文字を書くことの楽しさを、大正時代に生きた人たちと同じように味わって頂くことを目的にしています。題材も、書きながら日本の情感を感じて頂けるものを選んでいます。中には難しい文字も含まれていますが、それはそれで、難しい文字を書くということを楽しんでください。
木下真理子(書家)