私にとって書とは、美しくあるもの、ということに尽きる。
文字を極端にデフォルメしたり、後から墨飛びを施してみたり、人為的にアグレッシヴな表現を行うことはたやすいけれど、そんなことをしたら書が醜くて汚いものになってしまう。
最近ではアートという名のもとに、東洋文化である書の形貌からかけ離れているものも見受けられる。
人それぞれに美の基準は違う一方で、誰もが美しいと感じる普遍的な美がある。
大抵それは隠れていて、不純物を取り除き、純度を高めてゆく中で顕れてくる。
だから、長い歳月をかけて形作られてきた一文字・一文字が既に芸術品であることを意識の奥底に置きながら、森羅万象の一切の現象の中で、自然の摂理のままに書けるようになるまで私は書き続ける。