今週末から『第64回正倉院展』が、奈良国立博物館で開催されます。
奈良時代、唐の長安を手本として作られ、シルクロードの終着点とも言われていた平城京。そこにある『東大寺 正倉院』には、聖武天皇の遺愛の品の数々が、お妃であった光明皇后によって納められています。日本史の教科書などでも学んだ覚えがありますが、『高床式校倉作り』という建造上の特徴と厳重な管理下によって、宝物の保存状態の良さは、1200年以上前のものとしては、世界でもほとんど類を見ない大変に貴重なものとされています。
中国の鏡、錦、漆器や陶器、メソポタミアを起源とした竪琴、ペルシャ産のガラスの器、西欧の遊牧民が作り出した敷物、南方の香木など、それらは平城京が東西文化の交差した国際都市であったということを物語り、世界中の考古学者や王室が強い関心を寄せてる至宝でもあります。
正倉院の宝物が一般の人々の眼に触れられるようになったのは、明治時代ということであり、『正倉院展』という展覧会が開催されるようになったのは、日本人が再び“誇り”を取り戻そうとしていた終戦翌年からで、今年で64回目となります。
他の展覧会と異なることとしては、もともと慶事として営まれていたということと、その準備において、手や口を水で清めた後、宝庫の階段を上り、扉にかけられた麻縄を切って「勅封(ちょくふう)」を解くという『開封の儀』や東大寺大仏殿での『無障碍法要(むしょうげほうよう)』、閉幕後には『満願法要(まんがんほうよう)』が行われるなど、終始、おごそかに営まれているということではないでしょうか。
そして、私達は毎年このシーズンになると美しい宝物たちを目にする機会に恵まれ、聖武天皇と光明皇后の愛の面影を時を越えてそこに感じることが出来るのです。
私は同じ女性として、光明皇后の人生の足跡を、また書家として、かの『楽毅論』を書作された皇后のお人柄に触れられることを愉しみにしています。