梅雨の中休み

info.雑誌 「墨」(6/30発売号)の連載エッセイ「風につたへし」で取り上げた映像は下記アドレスをクリックしてご覧頂けます(期間限定公開)
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雨が降る日には葉から滴る露のように墨がにじみ、晴れる日は風が草を撫でるように紙が乾いた音をたてる。 夏至も経て、このところ続いている梅雨の合間の日差しは、来る夏の暑さを占っているかのようだ。

毎年、この季節は書作が重なる。 今書いているのは張説(ちょうえつ)の「遙同蔡起居偃松篇」という漢詩——。

張説は中国唐代の667年、洛陽に生まれた。 20代前半で科挙に合格して、官界へ。 直言はばからないことから何度も弾劾を受け、政争によって何度も左遷された。 ただの堅物かと言えばそうではない。「酔中作」という詩では、酔っ払うと楽しい、酔えば酔う程しらふの時と違ってくる、体を動かすと舞となって、言葉を発せば歌になる、としている。

そもそも人間は品行方正でもないし、行いが完璧なことなどもない。 失敗や過ちもあるし、それを何度も繰り返してしまう。時代の波に流されることだってある。

それでも彼は官吏として、文人としても、その名を歴史に残した。 頭脳明晰で賢いエリートというより、血が通っていて人間臭い。きっと張説はそんな人物だったのではないだろうか。