伝えゆく道

少し前のことになるけれど、国立劇場で行われた日本舞踊の公演に伺った。
前からとても興味があったものの、これまで私にはどこか敷居が高くて、なかなか観に行けなかった。

それが蜷川有紀さんに、尾上紫さんとのご縁を頂き、その機会は突然訪れた。
それもいきなり「素踊りの会」の公演に。

素踊りは、通常の公演のように雅やかな舞台セットの中で華やかな着物を纏って舞うこととは異なり、舞踊用の衣装をつけず着流しで、舞台も意図して簡素なものになっている。
その意図とは、つまり“踊りの原形”がそのまま見られるという、きわめて玄人的なもの。
無駄をそぎ落としていけば、“洗練”と“純粋”さに繋がってゆく。ただ身体一つで物語を表すということは、逆に演者の実力だけが問われることに等しく、ともすれば本性さえ表れてしまう。

そんな真剣勝負の舞台において、紫さんの“柔”と“剛”のあわいの舞は、本当に美しかった!
よく日本文化はスモール・ビューティなどとも言われるけれど、あの精緻な型から繰り広げられるスケール感は何だろう。
あれ程の運動量を息を乱さずに演じきられていることも凄い。
呼吸と間とか、余白の美など、書道に通じることも多い。

私はすっかり日本舞踊の世界に魅了されてしまった。
次回の公演は、少しリラックスして楽しみたい。


info.雑誌 「墨」(6/30発売号)の連載エッセイ「風につたへし」で取り上げた映像は下記アドレスをクリックしてご覧頂けます

https://kinoshitamariko.com/blog/gallery-cf/

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