つい最近の話。
ある動画コンテンツで知ったのは、いつのまにか小田急線の下北沢駅が地下に入り、私の知る駅前の姿はすっかり無くなっていたということ。
地図と照らし合わせても、どこがどうだったのかと、目を疑うほど。
調べてみると、再開発は既に2019年頃のことだったらしい。
小田急線の線路跡地となる地上には、すっかりキレイな商業施設もできていた。
その一方で、薄暗い路地に軒を連ね、戦後の闇市の面影を残していた食品市場は消滅してしまった。
私の脳裏に沁みついている記憶では、電車が通るたびにガタガタとした音が地面を伝わり、振動が身体についてまわる、下北沢の駅前はそんなところだった気がする。
街に抱くイメージは、その街との出会いからはじまる。
渋谷から京王井の頭線で5分という下北沢には、友人の舞台を本多劇場に観に行ったことが最初だった。
店が立ち並ぶ狭い街路は、お金が無くても私を受け入れてくれて、古本、古着、中古レコード、カフェといったサブカルチャーに直接触れることができた。
私が知っている下北沢は、友人からそのまた友人に、そしてその知り合いのまた知り合いにといったように、縁が限りなく繋がってゆく街。
今日、人間の記憶さえ単なるデータの集積に変えられてゆく中で、人の匂いを失ってゆく街と未来を、私たちはただ傍観しているしかないのだろうか。