新年のご挨拶

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
皆が幸多き一年となりますように。
木下真理子

ひよどりの こぼし去りぬる 実の赤き

与謝蕪村の俳句にもあるように、12月に入ってからヒヨドリが甲高い鳴き声を上げて、庭木の赤い実を毎朝食べにくる。ただ、不思議なことに元旦は、とても静かな朝だった。
もうウチの実は食べ飽きてしまい、どこか他の家に向かったのかな・・・そう思っていたところ、2日の朝にはいつもどおりの鳴き声が聞こえてきた。
1月1日は私たち日本人にとって、忘れてはならない大切な日。その日は、ヒヨドリにとっても、慎み深く、礼節の意識が働いていたのだろうか。

昨年の暮れ、私は別の庭木で、ゆずの実を採取した。
成っている実を採るという行為に、始めはためらいもあったけれど、採った方が養分がよりいきわたり、その方が樹の生育には良いと教わった。
なるほど、これは人の生き方にも通じる真理といえるのかもしれない。
採ったゆずの実の2つは、年明けにお雑煮の風味付けで有難くいただき、あとは実家に送る。すると数日後、ゆず茶を作ってみたという便りが届いた。
実家では味噌や漬物、梅干しなど、いまだに自家製にこだわっているけれど、そこには自然の中の営みがまだ少しだけ残っている。

食の自給率の低下が問題とされて久しい。
日本では就農人口自体が年々減っていて、約1,400万人が暮らす東京の食の自給率は、驚くことに0%(小数点以下は切り捨て)であるという。
欧米化してきた日本の食生活と国民の食への意識が、食の自給率にも関係していることは想像に難くない・・・。

ウチに赤い実を食べにくるヒヨドリは、取りこぼして地面に落ちた実も、残さず食べていく。
逞しい渡り鳥の姿を観ているうちに、一緒に活力を得た気がした正月だった。

言葉の力

記憶の入口

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