「寒の戻り」とはよく言ったもので、3月に入って雪が降り、しんと寒くなった。
3日は桃の節句「ひな祭り」。昔ながらのひなあられは、そんな〝雪景色〟と〝春の気配〟とが交じり合う、日本の風景を映しているかのように見える。
和菓子には今も、日本の四季が息づいている。
先日のブログで「食洗機」の話題から「ものの価値」について綴ったところ、「ささやかながら、豊かに感じる大切なこと」を思い出したという反応をいただいた。
江戸の頃から定着したというひな祭りといい、〝積み重ねるもの〟〝変わらないもの〟〝繰り返すもの〟には、普遍的なあたたかい感情が生まれる。
先日、〝雛阿られ〟を頂いた。庭には、梅と白椿が花開く――
ゆっくり循環する季節のように、静かに時を刻みながら、感情の機微を優しくいたわるような人生の費やし方を、私たちは知っている。
※漢字の「阿」は、こざとへんがカミが降下してくる梯(はしご)、可は横画と縦画で木の枝、口は祝詞を収める器の意で、「カミの許可を求める」の意。かつて日本では〝あ〟と発音する「安」の字とともに、変体仮名のひとつとして用いられた