森の国の博覧会

椿が満開を迎えている。
春の香りは、どんなに甘いのだろうか。
この季節は椿の蜜を吸いにくるメジロのさえずりが、毎朝、枕元まで聞こえてくる。

さて、4月13日からと会期が迫る大阪・関西万博のニュースも、日ごと増えてきた。
万博の象徴とされる「大屋根リング」はギネスに登録され、おそらく森の国とも称されるこの日本をイメージして、そのリングの中心に設置された「静けさの森」も完成したようだ。
約1500本の木々は、いずれ間伐しなくてはならない樹木が全国より取り寄せられ、移植されたとのこと。
これだけの規模で樹木が集められるのは、はじめてのことらしい。
ただ、それぞれに生態環境が変わってしまったことが、一木、一木にどう影響していくのか、気がかりではある・・・

第一次大戦後、万博にはテーマが掲げられるようになったそうだ。
そして近年の万博は、純粋に各国の産業・貿易・文化の紹介という目的から、人間による文明の進歩を発信するイベントへと変わってきた。
今回のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。
経済中心の社会が、地球温暖化、世界的な環境問題を招いた後、環境とは何か、持続可能な暮らしとは何か、問われている。
これまでは、人間の都合が行き過ぎていたに違いない。

間伐される木の基準は、樹齢30年以上の樹木で、それは成長が緩やかになり、CO2削減の効果があまりみられなくなるからだという。
そして間伐しなければどうにもならなくなった人工の森林は、再利用、再開発という名のもとに、樹木が切り倒されてきた。

ただ一方で、この国では古来、「御神木」が尊ばれてきたように、樹齢何百年の樹木がひとつの場所でその姿をじっと保っている、その意味(力強さや神秘性)も理解してきた。
地に根を張って生きている花木は、四季の変化を受け入れながら〝命の輝き〟を放つ。

安心して暮らせる社会とは何か、共生とは何か、自然の一員である人間が今一度振り返るきっかけを、この万博は与えてくれるのかもしれない。

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〝阿〟の意味

無常と縁起の万博

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