夏はシャツ

あやめ、かきつばた、そして花菖蒲が見ごろのこの時期。
夜になると少し湿った空気が窓から流れ込んできて、ひんやりと手足を癒してくれる。

その季節、その季節で思い浮かべる情景は、人それぞれで違う。

少し早いけれど、夏を

四季折々の移ろいに美と生甲斐を見出した道元禅師は
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷やしかりけり」
と、「夏(は)ほととぎす」と詠んで、ほととぎすは漢字では〈無常鳥・時鳥〉と表記されるけれど、
そこに深い思索が垣間見える。

清少納言の『枕草子』の中では
「夏はよる。月の頃はさらなり、やみもなほ、ほたるの多く飛びちがひたる また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし…
蛍にもどこか儚さを感じる。

私は「夏は白いシャツ」のイメージがある。
清少納言が「遠くて近きもの」と表現したように、夏の日の思い出が身近にある白いシャツに透けて見えるからなのかもしれない。

天武天皇の后であった持統天皇は夫を亡くした後、次のような歌を詠んでいる。
「春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣も乾(ほ)したり 天あめの香具山」
涙で濡れていたであろう白栲が、晴天下で風にそよいで乾いてゆく。
時の流れは、悲しみを乗り越え、前を向いて歩き出そうとする人の背中を押してもくれる。

※白たへ 楮(こうぞ)などの樹皮から採った繊維である栲(たえ)で織り上げた白布あやめ、かきつばた、そして花菖蒲が見ごろのこの時期、夜になると少し湿った空気が窓から流れ込んできて、ひんやりと手足を癒してくれる。

六月の空模様

kankei

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