字は人を表す

このところ、書家や能書家という専門家ではない、小説家や詩人などの文人、歴史を彩った武士や藩士などによる書の作品をよく鑑賞しています。一概には言えませんが、例えば、「文人の書」というものは、独自の世界観を自身の言葉や絵を用いて記す、書風も比較的自由なものが多く、そこには“親しみ易さ”や“味わい”というものが表出しています。

一方、「武士の書」には、道の精神性そのものが書風に表れるようで、折目正しさや力強さというものをまず感じさせます。私が惹かれるのは、どちらかと言えば「武士の書」の方で、勝海舟や徳川斉昭(慶喜の父)などによる書が好みです。そこには、当たり前のことを乱さずに、当たり前に行うという真摯さがあり、同時に、優雅さや品位の高さも感じるからかもしれません。

それが、かつて日常的な習慣であった“手書き”という行為に、“書道”という教養や嗜みを身に付けて書かれたものであることは一目瞭然です。また、その作品には彼らの独自性というものも感じますが、それは彼らの、奥深いところに潜んでいる「美意識」なのだと思います。

「本当の美しさは、あらわれるものではなく、かくれるものではないのか」

これは歴史小説家の宮城谷昌光さんの言葉です。

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(左)徳川斉昭の書  (右)勝海舟の書  出典:読売書法会図録より