サイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

まんまこと

お盆休みに入り、昨年から続いてきた仕事がやっと一区切りし、一息ついている。

ただそれにしてもアスファルトとコンクリートに囲まれ、ヒートアイランド現象にある“TOKYO”は本当に暑い。この題字のご依頼を頂いたのは、今春の新緑美しい頃で、その時には、まさかこのような猛暑の夏になるとは想像もしていなかったのだが。

この題字というのは、NHK木曜時代劇の『まんまこと』という現在放送中のドラマでのもの。「まんまこと」とは、漢字で記すと「真真事」(意味:ほんとうのこと)である。“江戸”が舞台で、町名主(今で言う調停員)の息子とその仲間が擦った揉んだしながら、町民たちの揉め事の真実を明らかにしてゆくというストーリー。いつの時代も人がいるところに揉め事は起こるものだが、そこは江戸人情が溢れる“粋”な仕上がりとなっている。いわゆる通常の連続ドラマのイメージとは趣が異なり、気負うことなく、ゆっくりとした気持ちで見ることが出来る。無機質な今の時代には、一服の清涼剤のように感じられるドラマではないかと思う。

明治維新後の日本は西洋の文化を吸収しながら成長してきた。しかしその一方で、徐々に自国の文化を切り捨て、置き去りにしてきた。虚飾に囲まれたこの時代にあって、本当に価値のあることをそろそろ本気で見直さないと、“日本人らしさ”は消滅してしまう。

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