サイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

口惜しさ

先日、とあるカフェで仕事の打ち合わせをしていた時のこと。
突然、ゴロゴロという〝雷〟のような音が遠くで聞こえた。
「雨でも降るのかな」と店の外を覗くと、空模様はまだそこまで悪くはない。
気を取り直して、再び打ち合わせに気持ちを集中しようとすると、相手の方が呟いた。
「あの音は、花火ではないですか?」。
その時、19時30分。

2年連続でその花火大会は開かれていなかったので、突然の不意打ちに、私は少し焦ってしまった。
まさかこのコロナ急拡大の状況で、開催されるなんて露とも思っていなかったから・・・。

私はとにかく花火を見ようと思い立ち、打ち合わせを早めに切り上げさせてもらって、とにかく
見晴らしのいい場所へ行こうと、会計を済ませ、商店街を小走りした。
移動の間は、斜め頭上に高速道路があり、音だけは轟いているけれど、花火は全く見えなかった。
お店を出てからおよそ10分、今度は小高い丘を息を切らしてさらに5分ほどかけ上がっていくと、
中腹あたりで、人だかりができていた。

そこまでたどり着いて、音がする方に振り返ってみると、やっと花火の全景が見えた!

なんと言っても3年ぶりの花火大会。
感慨ひとしおと言いたいところだったけれど、私が見始めてものの2分で花火は終了してしまった。
「あれ、8時までのはずだけど、5分前に終わってしまった」。近くにいた人は少し嘆いていた。
後から知ったことなのだが、花火は25分間で2万発、打ち上げられたという。

この3年、いろんなことを我慢してきた。
だから、いつか花火大会が開催される日が来ることを、なにより心待ちにしていた。
何故火曜日に開催されたのか。何故情報弱者の人間にまで告知がいき届なかったのか。感染リスク
が高いというのなら、何故あと1年、開催を待てなかったのか。

私にはよく分からない。でも、せめて始まる1時間前くらいに街頭の無線放送で、アナウンスして
欲しかった。
インターネットにアップされた全編の動画や新聞記事でどんなに美しい写真が見られると言っても。

やり場のない気持ちをつい吐露してしまったけれど、私はまだ望みを捨ててはいない。

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