サイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

空の向こう


今年もまたお盆のシーズンとなった。
最近は、お盆も大抵仕事が重なっていて、ただ暦の上で流れてゆく。
帰郷してお墓参りということは、ここ数年はとんとご無沙汰となっている。

かくいう今年のお盆も、日中は暑さ極まる部屋で、歴史の欠片を拾うような作業に
追われ、せめて夕刻は、と窓の外を静かに眺めて過ごしてみる。

先日注文したCDが届いた。
昨年の夏、三十周年記念でBlu-rayで再発された映画『稲村ジェーン』のサウンド
トラックで、2008年にリマスタリングされたもの。
さっそくCDプレイヤーに入れて、適度な音量で薄闇の廊下にかけてみる。
懐かしみの輪郭が浮かび上がってくる音像に、心身ともに癒される。

映画は1965年の鎌倉の稲村ヶ崎を舞台としている。
その頃、祖父と祖母が追いかけていたであろう夏。
もし、書が好きだった祖父がいなければ、今の私もいない。

部屋で夕やけを眺めながら、私は祖父や祖母のことを想っている。

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