サイトアイコンサイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

流されゆくもの、残るもの

photo by nanaco sato

今年も本格的な盛夏を迎えている。
けれども、丸の内東映(東映会館)は7月いっぱいで、65年という歴史に幕を閉じた。

個人的には丸の内東映の前を通るたびに、☞『利休にたずねよ』の題字を書かせていただいたことから、「おもてなし試写会」という皆で手作りした試写会が開催されたときのこと、この映画館のビルの上にあった、東映本社の企画制作部に揮毫した題字を直接届けたときのことなどを思い出していた。

普段、ひとりで筆一本で仕事をしている私が、このときは東映のスタッフのみなさん、監督をはじめとして映画製作の現場の人たちとの交流があった。
そんな中で、映画というモノづくりにも、その根源には人知れないクリエイティビティが深く潜んでいることを知り、また「茶の湯」を通して、人の熱意や良識を感じられるものは、いつも静かに私たちに無言で語りかけてくるということを学んだ。
ビルは跡形も無くなってしまうけれど、かけがえのない想い出、学び得た尊いことは私の心にいつまでも宿っている。

ところで。人はそれぞれ、さまざまな想いを抱いているけれど、最近はSNSなどで思想信条の対立する相手への誹謗中傷や数多くのデマが流布されて、社会問題となっている。ただ、流れゆく歳月は、そんな罵詈雑言もきっと洗い流していくことだろう。

私はXをはじめとする言論系のSNSを敢えて使っていない。
それは、文字や言葉を扱う書家として、それらを大切にしたいという思いがあるからだと思う。
真っ白な紙の上で文字や言葉と向き合いたいということもあるのだろう。

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