サイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

春の午後

一目惚れをして斜め掛けのショルダー・バッグを買いました。

“斜め掛け”。体をなぞるように斜めに掛けるショルダー・バッグによってできる体の丸みとの隙間、そこにはその人自身が見え隠れしているのだと思います。“斜め”には、セクシャリティというものがあります。そして、その魅力に知らずしらずのうちに私たちは惹かれているのではないでしょうか。

その昔、中国から伝わった漢字(真名)は、速く書けるようにと仮名そして平仮名へ育ちましたが、そんな仮名の作品には、多様な斜め書き・散らし書きの効果が使われています。武道の構えにも、微量の斜めのセクシャリティが漂っているように思えます。

また、見返り美人にも斜に構えた中に隠微が感じられますし、有名な「あの坂をのぼれば、海が見える。」という一節にも、“坂”という斜によって隠されているものへの憧れが表現されています。ピサの斜塔も、風になびく髪も、日舞にも、レストランの料理のソースにも、斜めのセクシャリティは潜んでいます。

桜も満開となりました。ひらりひらりと舞う花びらが美しいのは、そうした理由なのかもしれません。

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