サイトアイコン 書家/書道家 木下真理子

芸術の秋

狂騒的な選挙も終わった。
そこでは、今の世相に少しでも満足している人、まったく無関心な人、反発心を持っている人、その是非は別にしても、明確なコントラストが表れた。

ひんやりと寒い、秋夜のしじま。物思いに耽る。

先週末は、毎年の恒例行事となりつつある、生徒が主体的に企画する「書道合宿」が行われた。
普段は何かと段取り屋の私ではあるけれど、この合宿に関しては、お膳立ては全て整っていて、私は身体一つで参加する。

合宿中に、みんなの様子を見ていて思ったのは、受け身でいるより、自主的に行動する方が、人と人との関係性に“調和”が生まれるということ。

ところで、ここでは主に「半切」(136.3cm×34.8cm)という紙に向かって書作することになっていて、これは最初の一文字から最後の一文字に至るまで、20分ほど要する人もいる。

なので、途中で書き損じてしまうこともあるけれど、そこはグッとこらえて、最後まで書き終えることを私は勧めている。
すぐに投げてしまったら、これだ!というものを書き上げた時の充実感も半減してしまうから。

考えてみれば、時間芸術と言われている書道の、“書作”という行為は、やはり、“人生の歩み”と似ている。

一人、一人が、自分の人生を賢明に歩んでいて、でも行き詰まってしまった時に、ふと周りを見れば、近くに仲間がいる。

そんな理想的な風景を、現実のものとして目にしながら、私もその仲間の一人なのだということに、幸せを感じた。

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