先日、地方の名画座で『Mr.ホームズ』という映画を観た。平日の午前中だったからなのか、それともこの映画のテーマゆえのことだったのか、観客の多くがお年寄りの方たちだった。
年老いたシャーロック・ホームズが自分を引退に追い込んだ未解決事件を、最後に再び追うというストーリー。
何故ホームズは引退したのか、それは〈事件の真相が明らかになっても、孤独という心の闇は解消出来なかった〉ということを突き付けられてしまったからなのだという。
舞台の一つとして、原爆投下され一面が黒い焼野原となった広島の爆心地の様子も描かれているが、この映画は、人にとって生きることとは?老いることとは?孤独とは?という命題を否応無しに投げかけてくる。
ホームズは引退した後、終の棲家として、海が見える丘(イギリスのサウス・ダウンズ)にある朽ちかけた家に住んでいる。その土地の景観は、息を飲むほどに美しい。そんな美しい自然に囲まれていたら、孤独を抱え込まなくてもすむということに、ホームズ自身が気付いたのかもしれない。人間は自然の一部なのだから。
※神清智明 精神清くして、知明かに、知らぬことがない