CONCEPTⅠ>>
歴史を辿りながら
その国の文字を敬ってもらう
♦ 文字にみるアイデンティティー
日本の北海道~樺太南部の緯度に位置する、雄大な自然が広がるモンゴル国。
そのモンゴルの人たちにとっての文字の歴史は、まずチンギス・ハーンのモンゴル帝国時代に“モンゴル文字”が定められました。
それが、中国・清による支配下の時代を経て、1921年の人民革命で旧ソビエト連邦の傘下になったことで、「発音」はモンゴル語のまま、「表記」がロシアのアルファベットである「キリル文字」となりました。
そして1992年に社会主義国家が崩壊すると、民族の誇りを取り戻すかのように、再びモンゴル文字の復活がなされました。隣国とのせめぎ合いが行われてきた大陸の歴史の中で、モンゴルの人々は“自国の文字”が閉ざされた約70年を過ごしてきたのです。
一方、日本はというと、中国から伝来した漢字を、自国で独自に発展させた「平仮名」という文字に合わせて、“和様”という豊潤温柔な日本独自の漢字スタイルを確立させました。それは「御家流」とも呼ばれ、江戸時代までは公式書体として使用されていました。
しかし、明治維新後の近代になると、“唐様”という中国の漢字スタイルへと逆戻りしてしまいました。その背景には、大陸からの印刷機の伝搬による「活字」の普及、西洋文化の流入による「横書き」スタイルの浸透が影響していると考えられます。
このような歴史的な背景がそれぞれの国にあることから、お互いの国の文字と、お互いの伝統文化である書道に敬意をはらうという趣旨によるワークショップと席上揮毫を行いました。