CONCEPT>>
5つの「‐味」が付く言葉を題材に
和食と日本の書の魅力を知ってもらう
>席上揮毫の画像は下記参照
♦日本の食と書
2015年にイタリアのミラノで行われた万国博覧会のテーマは、「食」でした。
和食が世界文化遺産へ登録されたことも追い風となって、日本の食文化が世界から注目を集める中、その魅力を書で表現するという公開揮毫のご依頼を受けました。
かねてより、食文化と書文化は同じ次元で語れるのではないかと思っていた私にとっては、とても良い機会を与えて頂いたと思いました。
どこが同じなのかと言えば、それは食材と文字というそれぞれの素材を、日本の風土や歴史、さらに個の技術やセンスやスピリットを反映させながら、表現していくものであるという点です。
そのようなことから、今回、日本館で行った公開揮毫では、
〈めぐみ、きわみ、たくみ、うまみ、なごみ〉
という日本の食の特徴を表す五つの言葉を平仮名で書かせて頂きました。
選んだ五つの言葉は、中国の五行説で唱えられた「五味」に引掛けているのですが、それは「旨味」という味が、「五味(甘味・旨味・塩味・酸味・苦味)」の次にくる味として、現在“世界中で認識されている日本語”であるということを、しっかりお伝えしたかったということがありました。
♦日本人の創造性
揮毫した後には、「日本語」の特徴についても少しお話させて頂きました。
日本語では語尾に“味・み”をつけると名詞化するという言葉があります。例えば、あたたかい→あたたかみ、面白い→面白み、重い→重み・・・。“味覚”だけではなく、“感覚”や“印象”を表す言葉に「味・み」が使われるということ。逆を言えば、日本の料理は味覚だけではない“感覚”や“印象”も含まれているということもお話しました。
日本の仮名書には、散らし書きという、自然の“風景”が意識された表現法がありますが、そうした創造性は和食にも共通してみられます。
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