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iPadを使って、『利休百首』を題材に
文字が記された「媒体」の歴史を知ってもらう
♦ iPadを使った公開揮毫
国技館で開催された『The Art of Progress』という「伝統と革新」をテーマにしたイベントで、Audi社とアップル社による共同企画として、“iPad”という最先端テクノロジーと伝統文化を結び付けるという試みが実施されました。
それは世界初の電子媒体を使った席上揮毫です。iPadにはこの時点で書道ツールが2つありましたが、そのうちの「Zen Brush」というツールを使って、私が指先でiPadを紙に見立て作品を書き、その模様を会場にいらっしゃる方たちに見てもらうというものです。
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♦ 記録媒体の歴史
一般的には、紙に筆と墨を使って書くことが書道であると、それが当たり前のように認識されていますが、それは“紙”が発明された2世紀以降のことになります。文字(漢字)は紀元前21世紀には生まれていたという説もありますが、紙が誕生する前には、亀の甲羅や腹甲、牛の肩甲骨、青銅器、竹、木などに記されていました。甲骨には刃物などを使い文字を刻み付け、また竹は表面が丸味を帯びていますので、何に書き記すかによって、文字の形状は自ずと変わり、それがそのまま書道の変遷でもあるということを知ってもらう意図もありました。
iPadについては、これから紙の役割を担っていくのがこうした電子媒体であり、何百年か経った時には、この電子媒体で書道を行っているなんてことももしかしたら現実になっているのかもしれません。
©二玄社
♦ 伝統文化の継承
「伝統」というのは、過去から学び得るというだけではなく、今を生きている人にも普及させ、さらに未来へ継承していくことでもあります。
そんな想いもあって、千利休の教えである“利休百首”の中の一首を揮毫しました。
〈規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても本ぞ忘るな〉
※積み重ねられた伝統をきちんと学びとって、そこから独自の価値観を見出すために試行錯誤をし、最終的には一流の価値観を確立すること
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