2009 「高適(こうせき)詩」
H182×W60cm
書き下し文
「使清夷軍入居庸」 (五言律詩)
匹馬(ひつば) 行(ゆ)くゆく将(まさ)に久(ひさ)しからんとす 征途(せいと) 去(さ)ること転(うた)た難(かた)し 辺地(へんち)の別(こと)なれるを知(し)らず 祇(た)だ客衣(かくい)の単(ひと)えなるに訝(おどろ)く 渓(たに)は冷(ひや)やかにして泉声(せんせい)苦(さ)え 山は空(むな)しくして木葉(もくよう)乾(かわ)けり 言(い)う莫(な)かれ 関塞(かんさい)極(きわ)まれりと 雲雪(うんせつ) 尚(な)お漫漫(まんまん)たり
意味
一匹の馬とともに進むわが旅は、ずいぶん長いものになりそうだ。進むにつれて、旅路はしだいに困難の度を加えてゆく。辺境の気候が内地とは違うことを知らず、身にしみる寒さに、私はふとわが旅の着物がひとえであることに気づき、いまさらのように驚くばかりだ。道すがら、谷は冷えびえとして、泉の音もひとしおさえかえる。山には人気もなく、かわききった落ち葉が、踏むにつれて音をたてる。―この居庸(きょよう)へ来て、辺境の旅はもうこれで おしまいだなどと考えてはならぬ。まだこれからさき、雲と雪におおわれた旅路は、どこまでも続いているのだから。
出典
唐詩選