風の予感

初めて文庫本というものにはまったのは、高校二年の時。掌サイズの本のなかにぎっしり詰まった文字を見ながら、よくこの本のなかに物語が入っているなぁ、と思ったのを覚えています。

私の生家には、洗面所に本棚がありました。父が日曜大工で作った、文庫本サイズの四段の棚でした。そこから本を拾っては、お風呂のなかで読んで、ついつい長湯をしていました。

でも、本を読むのが好きだった、というよりも、文庫本を手にした時の感触が好きだった、と言えるでしょうか。今思うと、小さなおもちゃの感覚だったのだと思います。

高校二年の夏、決まって購入した文庫本は、キレイな表紙でパステル調なものでした。毎日一冊、学校帰りに見つける楽しみ――。

堀辰雄の短編集『風立ちぬ』。今でも残っている当時の一冊。“そのうちに、夏が一周りしてやってきた。”(「麦藁帽子」より)

もうすぐ五月。季節は春から夏へ。緑のなかに白のランニングの映える、風の季節の到来です。

恋の基準

模様替え

関連記事

  1. 六月の空模様

    2008.06.05
  2. レッド・クリフ、それは・・・

    2009.01.16
  3. Personal Data 59

    2001.03.01
  4. 熱波の行方

    2011.08.14
  5. タイ・レポート #2

    2010.04.27
  6. 不健全な常識

    2009.10.02
PAGE TOP