熊野“筆”巡礼 筆の里工房②

熊野“筆”巡礼 筆の里工房

この歌は万葉集の一首。山部赤人が、聖武天皇行幸の時にお供して読んだとされている。鶴は今の時代は北海道でしか見ることが出来ないが、当時は日本のあちらこちらで見られた。またこの歌は、一説には俵屋宗達が、本阿弥光悦との合作として名高い「鶴図下絵和歌巻(つるずしたえわかかん)」のモチーフにしていたとも言われている。

山部赤人の時代はまだ平仮名の成立前で、いわゆる「男手」と呼ばれる“楷書”あるいは“行書”の万葉仮名で記されていた。今回は敢えて、“草書”の万葉仮名である草仮名を崩して、いわゆる「女手」、つまり「平仮名」を編み出した女性としての感性と、漢字作家としての私の感性をブレンドし、万葉仮名を“行草書”で書いてみた。

熊野“筆”巡礼 筆の里工房

熊野“筆”巡礼 筆の里工房

使用する墨という素材こそ共通しているが、使用する筆は違い、当然筆づかいも異なる。書の場合、線を重ねて書くということがないが、中野先生のごく薄い墨色を使用した手先の動きと、それにより創造されていく造形が新鮮だった。

熊野“筆”巡礼 筆の里工房

今回、「ふであとの競演-墨の美」という展覧会の一環で、このような作品制作の機会を頂いたことに、心より感謝致します。

 

※この作品は10月30日まで「筆の里工房」で展示されます。

熊野“筆”巡礼 筆の里工房

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