過去・桜・未来

過去・桜・未来_1 東京 日本橋からみた桜

日本の春と言えば、桜。

この時期になると、日本国じゅうの人々の心を奪ってしまう桜ですが、何故こう特別に感じられるのでしょうか。そこには、表面的な美しさだけではなく、日本が春夏秋冬、四季が巡ることから、桜に人の生死における「輪廻」という観念を感じているからなのかもしれません。

ほのかに薄桃色の花びらが、ひとつの集合体となり華やかな姿を見せているかと思いきや、春風のそよぎを感じた途端、白い一片となってひらひらと舞い散ってゆく。それは、美しくも儚げですが、1年後には、再び咲き誇り、私たちを愉しませてくれます。

「清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人みなうつくしき」

先頃、東京ミッドタウンで行われたイベントで書にした与謝野晶子の歌ですが、古からいつも、桜は日本人の心を揺り動かしてきました。

さて、先日、古からの日本をテーマにしたオムニバスアニメーション映画、大友克洋さんが脚本・監督を手掛けた「火要鎮(ひのようじん)」を含む『SHORT PEACE』が、いよいよ7月20日に公開されると発表になりました。

過去・桜・未来/書家 木下真理子 『九十九』森田修平監督と_2
 浅沼誠プロデューサー(左)と森田修平監督(中央)

過去・桜・未来/書家 木下真理子 大友克洋監督と_3
大友克洋さん(右)

この企画は震災前からあり、当時“クール・ジャパン”という日本の文化を世界へ発信していこうという動きにも合わせながら、日本を舞台に過去から未来へと続く、“日本観”を描き出そうというものでした。

私はその中の一編で、森田修平監督が作られた「九十九」という作品のタイトルと劇中題字を手掛けさせて頂いているのですが、お話を頂いたのは震災直後のちょうど今から2年ほど前のことでした。日本じゅうがまだ混乱の最中で、私たち自身が日本人とは何かというルーツを見つめ直し、未来へ継承していくというテーマに、その時、特別な意味を感じてお引き受けさせて頂いたという記憶があります。

大友さんの作品と言えば、世界的に有名な『AKIRA』がまさにそうですが、ただの子供向けのアニメーションではない、人間の深層心理や行動原理、文明や科学による豊かさの享受とその行く末にある崩壊、また宗教観や民族性といったことも、そこには含まれているように思います。

崩壊と再生の輪廻。

私たちは今という時代に対峙し、今という時代を基準として生きているかのようにみえますが、どの時代にも光があれば闇もあり、喜びがあれば苦しさもあります。

人の心が波打つかのように、歴史もまた繰り返されています。

https://kinoshitamariko.com/works/other/16.html

私たちが、桜を愛でる行為に及ぶのは、古の遠い記憶が呼び起こされることを、どこかで知っているからではないでしょうか・・・

今年の夏はこの映画でさらに奥深く、その記憶を辿ってみてください。

SHORT PEACE || A KATSUHIRO OTOMO FILM

公式HP⇒ http://shortpeace-movie.com/

配給:松竹

春光の中で

“畏れ”

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