洗心パワースポット 青蓮院 編
二人の高僧を引き合わせた地のパワー
最後に、観光ガイドにはまず紹介されていない、地図にものっていない、知る人ぞ知るスポットをご案内します。それは、近くの青蓮院(しょうれんいん)の飛地境内にある「法垂窟(ほうたるのいわや/ほたるくつ)」です。
法然と親鸞の二人を導いた、出会いの場所。
「肉食(にくじき)妻帯」でも知られている親鸞は、九歳のときから20年間、比叡山で厳しい修行を積みましたが、なかなか悟りを得ることができず、意を決して下山します。そして、聖徳太子が建立したとされる京都・堂之前町(どうのまえちょう)の「六角堂」で、煩悩に苛まれながらも、百日間の参籠(さんろう)に挑みました。
すると九十五日目の夜明け、観音菩薩が夢の中に現れて、こう告げたといいます。「もし、前世の宿業によって女性を求めているのなら、私が代わりに女性となって添い遂げよう」。そして、親鸞の進むべき道を示したそうです。親鸞はすぐに、法然のもとへと駆けつけました。
法然と親鸞が初めて相見えたのは1201年のこと。これも他力が成せる業なのかもしれません。
吉川英治の小説『親鸞』(講談社)には、この二人の出会いが次のように描かれています。
「(法然)上人もほほ笑んだ。範宴(はんねん:親鸞)の笑顔からは、ぱらぱらと涙がこぼれた。涙は、随喜の光だった 」。
ここは「浄土宗」の宗祖と「浄土真宗」の宗祖という、後の日本仏教史に名を残す二人の高僧を結びつけた因縁の場所。静けさの中に、磁力が漂っているとを感じることでしょう。
写真:佐藤奈々子 テキスト:木下真理子 協力:知恩院,青蓮院