洗心パワースポット 芬陀院 編
「塔頭」というミニマルで閑寂幽玄な世界
東福寺を訪れた折には、塔頭(たっちゅう:大寺院内にある小寺院や別房)に行くこともおすすめします。東福寺には、かつて80余りの塔頭があったそうです。
雪舟が東福寺に参禅する際に泊まっていたとされる芬陀院(ふんだいん)。こちらの「鶴亀の庭」には、雪舟の逸話が残っています。
関白・一條兼良から亀の絵を要請されるも気が進まない雪舟は、代わりに石組みの亀を作ったところ、これが夜中に動き出してしまったそうです。慌てた和尚は雪舟に頼み、雪舟が甲の部分に大きな石を突き立てると動かなくなったという伝承です。
この庭園は、イサム・ノグチの友人で、モダニズムの作庭家として名高い重森三玲の手によるものなのですが、重森は往時の庭を一石の補足もなく復元しています。
塔頭の各院はそれぞれに趣ある庭を有しています。いずれの庭も、石や樹木などに意味や由来を持っているので、それを知るのも楽しいことです。
禅寺の庭は修行僧が縁側で坐禅を行うためのものでもあります。
坐禅とまではいかないまでも、静かに庭を臨み座っていると、時の流れが緩やかになっていることを感じます。それは、“自分探し”というより、“忘我のひととき”なのかもしれません。
写真:佐藤奈々子 テキスト:木下真理子 協力:東福寺,芬陀院