現在、横浜の三溪園で開催されている、湿板光画家のエバレット・ブラウンさんの写真展「会所ー三溪園の建物と花 」。
ここに掲出されている写真は、デジタル写真が全盛のこの時代にあって、敢えて“湿板光画“という古典的な技法が使われている。専門的なことは上手く説明出来ないけれど、分かり易く言えば、坂本龍馬のあの有名なポートレートの風合いは、この技法によるもの。
撮影にしても、現像にしても手間がかかる。でも、エバレットさんはこの手間を逆に表現性の利点に置き換えている。
それは、藤原素朝さんがいけられた花と三溪園の空間を被写体にしていることから推察出来る。
モノクロームで実際の色彩は分からないが、おそらく素朝さんの花は“命”を強く感じさせるものではないだろうか。つまり、その“有機的な存在感”をアンティーク調の写真に写し出すことによって、観る人は単に古い印象の写真を眺めるのではなく、まるでタイムトラベルをして、その場に居合わせるような臨場感を生んでいる。
さらにその技法は、シャッターがきられてから被写体はしばらく動けないということを強いられるが、逆手に、ただ花だけが静かな空間に存在することを捉えていることで、その写真には、いわゆる人智の及ばない神聖な空気が漂っている。
エバレットさんと素朝さんにより紡ぎ出された世界と向き合いながら、少しずつ心に清浄な水が沁み入るような、そんなひと時を過ごすことが出来た。
3月12日(日)まで三溪園内「三溪記念館」で開催
Photo by Everett Kennedy Brown