友と生きる未来


以前、『日経ビジネス』という媒体のご依頼で「不老」という文字を書かせて頂いたことがあった。
編集者の方から、あの松本零士さんの「銀河鉄道999」の絵と組み合わされると聞いて、とても嬉しかった。
「不老」といえば、つい中国の神仙思想のことが頭に浮かんでしまう私だけれど、映画「銀河鉄道999」は大好きな映画の一つ。
そして「999」は、今や日本人だけではなく、フランスをはじめ世界中で愛されている。

この映画が最初に封切られたのは1979年とのこと。
高度成長期を経て、バブル経済へと向かう狭間の時代ーー。
この時代は、みんなが夢を持って生きられた時代だったのだろうと思う。
「999」は、人間VS機械という構図を軸に、人間が人間として、信じるべき、人間の奥に潜在する力を深く語っている物語。
機械の身体になれば不老になれる、そう信じて前進する少年の姿を見ながら、実は限りある命を燃やす生身の少年に、誰もが心振るわせていた。

テレビ版で描かれている時代設定は、西暦2221年ということらしい。
2023年、現実の社会では、超富裕層の間では既に宇宙旅行も行われはじめている。
また「オープンAI」というものに、巨大IT企業が数兆円規模の投資をするというニュースも。それはAIが既に人間の話し相手、相談相手になる段階まで開発されているという。
テクノロジーは進化し、着実に「999」で描かれる社会に向かっている。
そして、進んでいるのはテクノロジーばかりではなく、富める者と貧しい者との著しい格差も。

ただ、「999」で描かれた社会と今の現実社会とは、一つだけ違うところがあると私は思っている。
「999」が描く世の中では、敵とやむを得ず戦うにしても、トチローやハーロック、エメラルダスなど、鉄郎には理想を心に抱き、強い絆で結ばれた仲間たちがいる。
それと比べて、今の世の中は一人ひとりが目に見えるものをことごとく敵対視し、つまり戦い、争う相手を自ら生み出し、孤独に生きているように思える。
この映画「銀河鉄道999」が出来た当時、40年後にこんな社会が訪れようとは、誰もが夢を抱けた時代には想像だにできなかったのかもしれない・・・。
夢も希望も抱けない時代は、人間が人間を信じられなくなってしまう。けれども、やはり信じるという才能こそ、人間の証だとも思う。

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