来週は、関東で桜が満開になるという。
平年より早い開花、そういうフレーズを毎年のように耳にしてはいたけれど、コロナ関連のニュースも少なくなり、やっとマスクを外した日常生活が戻ってくるのかもしれない。
ところで去る17日、新潟では「第一回新潟国際アニメーション映画祭」がスタートし、その記念すべきオープニングで、題字を担当させて頂いた「弦の舞」が上映された。この映画は中国は唐代を舞台にした、中日共同の制作による短編で、コロナによるパンデミックを経て、遂に上映の機会を得た。
昨今、筆文字というと、面白く、ある種奇異な姿形に書く表現のことだと思われがちで、どういうわけか、字画が変な方向へと曲がっていったり、一部分を極端に誇張することが〝表現〟だと思われる風もある。また逆に、表現主義は部外にして、単に、上手になりたいと漠然と実用を求める人もいる。ただ、そのどちらも正解だとは、私は思わない。
活字やフォント、デジタルの進化した現代において、わざわざ〝筆で〟とお話を頂くのは、「筆でしか出せない〝筆致〟」が求められてのこと。それは気持ちの良い生活がしたい、とただただ素直に、そう思うことにも似ている。どこまで技術が進歩しても、エアコンの無機質な風は、自然の風の心地良さにはかなわない。デジタルの最前線で活躍している森田修平監督が、アナログを追求している私にお声掛けくださることもそうなのかもしれない。
このような「頃合い」は、人間独自の感受性で、その加減を知ることが、書を学ぶうえで欠かせない。
けれども、それは学校教育の場ではなかなか学べない・・・。
コロナ禍も収まりつつある年明け、数年ぶりに新しく開講させて頂いたカルチャー。NHK青山センターでは、書に限らず、さまざまな文化講座が繰り広げられている。文化的刺激も感じるその場で、画一的な学習法と異なり〝書の魅力を感じながら学ぶ〟というご依頼を受けた体験型の1月期は、満席で無事終了させて頂いた。
4月期は月1回のコースをもう一つ増設。字を筆記する機会も失う現代生活の中で体感する、指先の心地良い頃合いを共有して頂けたら嬉しい。