原点回帰

6歳の時、近所の習字教室に通い始めた。
木目の壁に身体を向かい合わせて、手本を凝視しながら一心に書いた。 書いたものを先生に見てもらおうとして、立ち上がると、横目に庭の光が飛び込んでくる。光と影が織りなす穏やかな情景。静かな時間。

ただ書くことだけに、夢中だった。

そして、今も同じように書き続けている。
有難いことに書にまつわるお仕事を頂き、人に指南するということもさせて頂いている。私自身、“売る”作品が目的で書くのではないし、人から「どうして書家になったのか」と聞かれることもあるが、そもそも書家になろうと思ったこともない。

今は都合で海外に居ながら学ばれている生徒から、Air Mailで作品が届く。そこに添えられた手紙には、次のように書かれていた。※御本人の許可を得て掲載

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時間、紙、精神の集中。課題が進むにつれて、その度合いも大きくなり、自分自身が試されます。大げさな言い方ですが、紙1枚に込める思いと、その時間における自分のありかたが、「人生の縮図」となっています。緊張しすぎて、曲がったり、それたり、失敗と思ったり。逆に大胆に動かして、うまくいったり、損なったり。その繰り返しです。そして、一歩進めば、喜びはとても大きく。日本でない場所で、練習できることもまた、その思いを強くいたします。
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書くことが教えてくれることは、一般的に想像されている以上にある。特に古典と呼ばれる書には、様々な事柄が豊かに蓄積されている。

“書作品”というモノとしての価値ではなく、“魂”に触れるという価値がそこにはある。
だから私は誰よりも多く書いているのかもしれない。

清明

姫路城 GW 3nights『HAKUA』

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