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先日、大東文化大学の書道研究所主催で『明清書法史に息づく、帖学×碑学の系譜。』と題された書道芸術文化講演会が行われた。

「明末清初」は、中国の歴史の中でも動乱の時代であり、百花繚乱のごとくロマンチシズムに溢れた書が花開いた時代でもある。

告知を受けて私も是非聴講したいと思ったのだが、この日は自身が受け持つ講座が同時間帯にあって、残念ながら叶わなかった。

講演会は、書道研究所所長の河野隆先生のご挨拶にはじまり、私の師匠である髙木聖雨先生と東京国立博物館の富田敦先生の基調講演、最後に髙木先生による行草書一つと篆書二つの席上揮毫があったことを、当日行かれた方に伺った。

また会場の写真を見せて頂き、驚いた。
貴重な書の実物の数々が、ガラスケースで保護されていないそのままの状態で、直に、肉迫しながら観られるように掲出されている。勿論ご覧のように、写真撮影も可能であったとのこと。

富田先生もおっしゃられていたそうなのだが、こうしたことは文化財の保護という使命を持っている博物館の展覧会では絶対にありえない。
「ガラス越し」では伝わってこない、書の持つ本当の存在感や空気感を直接感じられる絶好の機会であり、まさに「学問の現場」という気がする。

写真の作品は、向かって左側が明末清初を代表する書家・王鐸(おうたく)によるもの、その隣に並んでいるのは清朝第四代皇帝である康熙帝(こうきてい)に愛された孫岳頒(そんがくはん)によるもの。
王鐸は明王朝滅亡後、清王朝に降伏して二王朝に仕えた。こうした行為は中国では非難の対象となり、乾隆帝(けんりゅうてい)の時代には王鐸の著書は禁書になっていた。

また通常は、仕えた宮中が異なる書家どうしの書を並べて展示することも避けられるので、そのような歴史的・文化的観点から考えると、このような作品配置がなされていることも感慨深い。

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