記憶の限りでは、人生で初めての体験となる、このような機会でも頂かなければ、履くことはなかったであろう鮮烈なパンプス。
一瞬、書家らしからぬとは思いつつも、この色は・・・。そうあの「丹色(にいろ)」。古来、神社の神殿や鳥居、巫女の衣装などで使われている、魔除けとか、不老不死を祈るための神聖な色。
“丹”という字が当てられているのは、原料である水銀の一種、丹砂(たんしゃ)からきている。
もともとの由来は中国にあり、書道で用いる朱墨の原料も古いものは丹砂で作られていた。そんな貴重な「朱墨」もまた一般的には使用が許されるものではなかったはずだ。
と、21世紀の今、“洋服”を身に纏い、(筆を持つわけではない)ファッション写真の撮影をしている最中にも、そんなことが頭を過ってしまう。