立秋を迎えたとはいえ、秋というにはあまりにも暑い日が続く。
かさばる扇風機は所有しないので、昼間の熱が夜半の部屋に重たく留まっている。寒々しいクーラーの冷気も苦手なので、就寝時は闇夜からのそこはかとない風が頼り。
それでも寝苦しい夜には、横になってジッとラジオを聴く。
アナログな面影を残す放送局の電波に乗って、かすかな音楽が届けられると、気持ちも解れる。 先日はウクレレの調べが枕元で奏でられた。目を閉じると、かつて見たことのある、片岡義男さんがハワイの田舎の街並みを撮影された写真集が思い浮かぶ。
照りつける太陽と甘い海風により、外壁のペンキが剥げたり朽ちかけた店が並び、路の脇には古ぼけたアメ車が佇んでいた。その風景は、街自体が静かに経年劣化をも愛おしみ、受け入れているように見えた。
そのノスタルジックな街並みは、きっと今も大きくは変わっていないだろう。
人を幸せに導くはずの欲張りなハイテクもハイスペックも無縁。常にスクラップ&ビルドを迫られる都会とは違い、緩やかな時の流れは、人生を優しく包み、清閑な暮らしをもたらしてくれるのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、いつしか眠りに落ちていた。