すっかり闇夜は、鈴虫の音に包まれている。
人の声ひとつしない、夏の終わり。
今年の夏は、江の島に行きたい――
自粛生活、リモートワークという言葉が並んできたここ数年の
日本の夏を振り返り、今年こそはと、そう願ってはいたのだけれど。
結局それは叶わなかった・・・
叶ったことと言えば、ここ一年ほど、気にかかって探していた数冊の
本が、永田町の国立国会図書館にあって、そこをたずね、その本を
手にしたこと。
閉架式の図書館は、終始システマチックで、本の閲覧も複写もまずは
館内のPC端末から申し込みをしてからでないと進まない。
そのそっけなさはあっけにとられるものの、皆それぞれに目的が
あって来るためか、館内は静寂に包まれ、いざ困ったというときには、
職員の方々が穏やかな物腰で親切に教えてくれる。
その居心地の良さといったら。
また館内は飲食禁止だけれど、六階にコンビニエンス・ストアと飲食が
できるフリースペースがあって、読書の合間に一息。
そのスペースから見た景色は、都心でありながら視界を遮るビルも無く、
とても開放的で、コンビニのドリンクの品揃えも心なしか通常とは異なり、
何か得した気分にもなる。
結局、一週間も置かず、二度も足を運んでしまった。
学生だった頃を、ふと思い出す。
宿題や休み明けに控えたテスト勉強、旅行にでも出かけないと描けない
ような絵日記、もののひと月で答えを出さなければならない自由研究も、
きつい思いをしていた記憶がある。
それに比べれば、まるで終わらぬ仕事の波に漂いながらも、本当に自分に
とって必要な学びを求めて、こころおきなく過ごせた夏だった。