美文字のルーツ

美文字のルーツ

年明けより編集者の方と進めてまいりました、私が書家の立場で監修させて頂きました“ペン字”講座が、3月2日発売の週刊朝日別冊「みんなの漢字」(朝日新聞出版社)に掲載となります。

美文字ブームの昨今において、“ペン字”講座と言えばやはり「書き方」の練習、「綺麗に書くためのコツ」などを想像される方も多いかもしれませんが、それらを習う前に〈もともと日本の文字は、それ自体が美しいもの〉ということを認識して頂いて、そのような観点に立ったペン字講座にしています。

では、そもそも美しい文字とは何なのか?と問えば、なかなか言葉にすることが出来なかったり、現代では活字やパソコンの文字のような“垂直・並行に整った”文字をイメージされる方がほとんどではないでしょうか。

少し歴史的な話になりますが、活字(印刷文字)というものは、もともと筆で書かれた文字が基になっており、楷書(かいしょ)と呼ばれる書体の一種がサンプルになって出来たものです。つまり、筆文字によって、今日、多用されている文字の形は決まったとも言えます。ただ、それは合理性の追求から画一的に行われて、上記のように、“正方形の升目に整っていること”が美しさの基準となっていることについては、残念なことなのですが・・・

古代、中国から日本に漢字が伝来し、その後、国風文化の起こりによって、漢字の書き方も中国風から、日本風の漢字の書き方に変化したということがありました。中国風を「唐様(からよう)」、日本風を「和様(わよう)」と言いますが、これは書き方=文字の形を指しています。

平安時代、漢字を使うことが許されなかった女性たちが平仮名を編み出し、時を同じくして、その平仮名に調和する、日本的な柔軟で温和な雰囲気を帯び、人の心を和ませてくれる美しさを備えた「和様漢字」というものが出来ました。それは、古の日本人の感性や美意識が詰まった美しい文字の形なのです。

この「和様」というスタイルは、江戸時代まで主流であったのですが、明治維新以降、衰退してしまいました。西欧文化の流入により、日本人の美意識の基準が、〈柔らかく崩れていて、左右非対称のもの〉から、〈メリハリがあり左右対称でシンメトリーなもの〉へ変わっていったことも大きいと思います。

実はこのような流れから、現在、私たちが認識している文字の基準もそれに則したものに変わっているということは、知っておく必要があります。

さて、日本の文字の本来の美しさにこだわる私としては、この「和様」の美しさを今一度、日本人の感性として取り戻したい、そんな想いで、この“和様ペン字”というものを考案しました。