硯の講演会とシンポジウム

11/23、宮城県石巻で開催された硯のシンポジウムに参加し、講演も行ってきました。

江戸時代からの歴史を持ち、学童硯では日本全体の約90%の生産を誇っていた石巻市雄勝町(おがつちょう)の硯産業。しかし、2011年の東日本大震災によって、壊滅的な被害を受け、今では硯を作る職人さんも1人となってしまいました。後継者不足も深刻な状況となっています。

硯の講演会とシンポジウム/書家 木下真理子 講演

伝統を守るということは、時代の需要の変化によって淘汰されてしまうこともあり、灯を絶やさぬよう、それを支えようとする人たちが必要です。そして、資本主義の物差しでは測れないものは、資本も集まりにくいという現実と向き合って、それをどう解消していくかということも考える必要があります。それでも、雄勝町の硯は復活に向けて歩みはじめています。

今回の震災復興プロジェクトにおいて、自由大学(世田谷ものづくり学校)が、この雄勝硯とコラボレーションすることが決まっています。世田谷ものづくり学校というのは、廃校となった小学校を再利用して、文化の創造と発信を行っている組織ですが、創設者は、あのIDEEの創設も行った黒崎輝男さんです。今回の硯のプロジェクトも、彼らの感性と力がいかんなく発揮されるのではないかと思っています。それはIDEEの家具にみられるような、自然素材の温かみと、プロダクト・デザインとしての機能性、さらに地球環境という視点によるエコロジカルな思想などの融合による、新しい硯の創造です。

シンポジウムでは、黒崎さん、雄勝硯生産販売協同組合の澤村理事長も交えてディスカッションが行われました。そのシンポジウムへの参加と、私も硯の歴史と奥深い魅力、書道の本質について、そして書家にとっての硯との関係性といった内容の講演をさせて頂きました。

とにかく、100年後の人たちに伝統工芸品、スタンダードなものと思われるような、そんな硯が、これから新たに創られていくということを期待しています。伝統というのは、未来に向かっていくものでもあるからです。