新年になり、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」が始まりました。官兵衛といえば、秀吉に使えて幾度の戦をくぐり抜けた、文武両道の人でした。
山本兼一さんの小説「利休にたずねよ」にも、官兵衛が出て来る「野菊」という章があります。
利休切腹の前年、利休に何とかして一泡を吹かせてやりたいと考えていた秀吉が、茶の湯を嫌っている官兵衛に知恵を働かせて花を使って利休を困らせて欲しいと言いました。官兵衛は、花籠から選んだほのかな紫色の野菊を一輪、事前に天目茶碗の中に入れておきます。野菊の扱いにさぞや困るだろうと、茶室をのぞき見て愉快になっている秀吉でしたが、利休はなんのためらいもなく、右手で野菊をすっとひきだし、畳に置き、見栄も衒いもなく、茶をたてます。
そのことに、ひどく機嫌を損ねた秀吉に対して、官兵衛は「この官兵衛、茶の湯嫌いを通してまいりましたが、なかなか奥が深いよいものと感心することしきり。臨機応変の茶は、軍略の練磨にも通じましょう。本日を機会に、利休殿に手ほどきをしていただきとう存じまする」と言ったので、秀吉がさらに敗北感を強めたそうです。
実際に、官兵衛は茶の湯を嗜み、利休とも親交があり、晩年は「黒田如水茶湯定書」を書いて、利休流の教えを守ったと言われています。
黒田官兵衛から荒木村重(茶人名・道薫)に送られた書状の写し(光源院所蔵) - 神戸新聞NEXTより