二十四節気上では来週、立夏を迎える。つまり、春はもう一週間もない。私はと言うと、この春も相変わらず紆余曲折あり、未だ解決していないことも抱えている。ただゴールデンウィークというのは、ちょうど春から夏へ意識の切り替えをするためにあると、少し前向きに捉えたい。
さて前回もお伝えした通り、現在『生誕300年記念 若冲展』が東京都美術館で開催されている。
若冲と言えば、その画風から奇想の絵師というイメージが一般的。ところが別な角度から若冲像が見えてくるエピソードがある。
それは家督を弟に譲った後、家業である青物問屋を含む市場が、上からの圧力によって窮地に追い込まれた際に、町老寄りとして事態の解決に向けて奔走したというもの。
醜い利権争い、体制からの圧力というものが、時代を問わずあったことに溜息も出るが、芸術家と言えば世俗を離れて隠遁するという印象もある中で、若冲が俗事に巻き込まれ、煩雑なことにも向き合っていた時期があったことは興味深い。
もっともその数年間はなかなか絵を描けなかったようだが、でも臆することなく立ち向かっていくその姿勢も芸術家らしい行動だと言える。また幕府の御用絵師として自分の一派を築こうとしなかったことにも、若冲の美学と信念が感じられる。