■短期集中連載「台北 國立故宮博物院」展■
第一話 二つの故宮
日本は古くから大陸(中国)に文化を学び、吸収した上で、一つひとつ昇華させてきました。それは、稲作の方法から、漢字という「文字」、仏教やその中の一派である禅思想、武士道のバックグラウンドとしてあった儒教思想など。
平安中期に行われた遣唐使の廃止の時代と第二次世界大戦後にアメリカの影響を強く受けた時代を除き、江戸時代の鎖国という時でさえも、大陸の文化を積極的に輸入してきました。茶道も華道も書道も、「道」というレベルにまで高めたのは、日本人と言えるかもしれませんが、そのルーツはやはり大陸にあります。
さて、今回の展覧会ですが、「故宮」という博物院は、世界に二つ存在します。一つは、2011年に日中国交正常化40周年に同じ東博で開催された北京にある「北京故宮博物院」。もう一つが現在、開催されている「台北 國立故宮博物院」です。
この二つに所蔵されている文物は、もともと映画『ラストエンペラー』の舞台として有名な「紫禁城(しきんじょう)」にあったものです。最後の王朝・清朝の第六代皇帝である乾隆帝(けんりゅうてい)は、歴代王朝の文物の収集に務めた人物で、宋・元・明・清の名筆が多数残されていました。
では何故、紫禁城の文物は袂を分けてしまうこととなったのでしょうか。次回、それについてお話させて頂きます。